万年筆とか周辺の沼の話

 暴走冷蔵庫アドベントカレンダー( 暴走冷蔵庫 Advent Calendar 2020 - Adventar )16日目です。

 

§1.はじめに

 みなさんは万年筆は持っていますか?

 ボールペンであれば自分で買ったり、何かでもらったりする機会もあるだろうが、万年筆はこだわりがありそうな人が持つイメージがある。だからそうそう持ってる人なんていないだろう。そう思っていた。

 ところが話題を振ってみると案外いた。びっくりである。みなさんご自慢のマイ万年筆を所持してらっしゃる。今までどこに隠してた?

 

 そういうわけで、遠いと思いきや意外と近いところに隠れていた万年筆の世界に足を踏み入れてみました。踏み入れてからまだそう経っていないので詳しいことはよく分かっていません。浅瀬でチャプチャプやっている者の話だと念頭に置いてお読みください。

 

§2.万年筆

 万年筆と一口に言えど、いろいろあるらしい。それは太さだったり書き心地だったり。だから複数本所持しているということも珍しくないようだ。ペンを握る利き手は1つしかないのに(両利きは2つ)、全く欲張りさんなことである。何がそんなに魅了するのか。答えを得るために先輩ユーザー達に意見をいただきつつ万年筆を購入してみた。

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LAMY safari candy mango 万年筆lamy.jp

 ラミーサファリのキャンディマンゴーというお名前。

万年筆にはカートリッジを装着するタイプとコンバータを使ってインク瓶から吸い上げるタイプがあるらしい。コンバータを買わずとも万年筆本体に付属して1本のカートリッジインクが入っていた。万年筆の世界においてはスタンダードなブルーブラックという色のものだ。これを使えばすぐに万年筆を試すことができる。しかし、特に仕事で使うというわけでもないのでスタンダードな色にこだわる必要もない。せっかくならいろんな色を試してみたい。というわけでコンバータも併せて購入した。

 説明書を読みながらインクをコンバータに入れ万年筆にセットする。案外簡単にできるものである。インクもすぐ出てきた。

 書き心地は、と問われても他の万年筆を知らないのでどうだとも言えないが、インクがかすれたり途切れない感じのボールペンに近いだろうか。いい、とは思う。だが、いまいち複数所持したいと思うほどの良さについてはピンとこない。

 

§3.インク

 そして、調べを進めていくうちに新たな発見をした。

 それは、インクの存在。

 さきほども触れたが、インク瓶というものがある。たくさんのメーカーがたくさんのインクを世に送り出している。同じ「赤」だ「青」だと言えどもその幅は広く、その世界について調べている間に自分の理想の色を求めて各地の文房具店を訪れる「インク沼」なる住民の話に出会った。

 ところでここにひとつの落とし穴が隠れていた。あなたが万年筆を買ったとしよう。そこにインクを入れることを考える。

 さて、世の中にはたくさんのインクがあるようだ。とりあえず何にでも使えそうな黒に近い色をひとつ。おや、青のインクには特に多くのバリエーションがあるようだ。ひとつ手に取る。黒、青、ときたら次は緑にしようか。いや、暖色系もひとつあると良いのではないだろうか。家に帰って机に向かう。買ったインクを並べてはたと気づく。

 1本の万年筆に入れることのできる色は1色だ

 なんということだろう。恐るべき罠である。いくらインクを並べたとて入れることができるのはたった1つだ。悩んだあなたは新たな万年筆に手を伸ばすことにだろう。「ところでメーカーによって結構違うって聞くなあ」「ペン先の太さも色々あるらしい」「デザインも豊富だなあ」ほーら、深淵が手招きしているぞ。

 

§4.ガラスペン

 例えば無計画にインク瓶を10本ばかり買ってきたとする。これを生かすには万年筆を同じく10本用意しなければならないのか。もっと気軽にインクを楽しむ方法はないのか。そこに名乗りを上げるのが「ガラスペン」という存在。

 インク瓶に浸すと吸い上げて書くことができる。インクが出過ぎたりかすれたりとバラつきがでたり、一度にそんなに書くことができないのが難点。あとガラスなので脆い。持ち運びにはあまり適さない。あくまでライトにたくさんの色に触れたいという人にオススメだ。色を変えるには水に浸すだけでオッケー。すすぐ時に絵の具みたいに他の色と混ざってすぐ交換しなければならない、なんてこともなかった。

 せっかくなので、ガラスペンで手持ちのインクを使ってみた。紙については後述するが、やはり色々あるようで、とりあえずその辺にあったルーズリーフを使用した。よほど酷くない限り書き直しはしなかったので、ありのままのかすれやにじみも味わってほしい。字の上手下手は放っておけ。

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 エルバンというメーカーのもの。ラルム・ド・カシス、ブルー・アズールはまぐさんに万年筆購入祝いにといただいたものだ。万年筆ユーザーが選ぶのだから間違いないのだろうと思う。その隣のカイヤナイト・ネパールは派手にこぼした名残りがある。おしゃれな顔して我が家の暴れん坊将軍である。

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 セーラーの四季織から金木犀と若鶯。これは誕生日によんたさんももかすさんからいただいたもの。カラーのチョイスはももかすさんだそうだ。四季織シリーズは松原さんもお気に入りのようで既にオススメされてカートリッジタイプは揃えてある。みんな大好きなんだなあ。

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 パイロットの色彩雫から竹林・紺碧・霧雨。これは万年筆を買うにあたってインクが必要だろうと文房具店にいったところお好きなカラー3点で1セットという風に売られていて瓶の小ささからも入門に良いのではないかと購入したもの。のわりに、実際使うのは今回が初めてだった。

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 NE6 TOHOKU BUNGU LAB.の「東北、旅する祭りインク」。レアなご当地感があったので思い切って買っちゃいました。色が県名とお祭り名になっている。

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 並べてみた。頑張ったもののちょっと影がかぶってしまい、見づらくなってしまったが似たような色でも違いがあるのがわかるだろうか?決して同じ色はなかった。なるほど、これは沼かもしれない。

§5.からっぽペン

 ガラスペンだと制限されることなくたくさんのインクを楽しめることは分かった。でも、ムラができるのはいただけないなあ。たくさんのインクを楽しみたい、できれば気に入った色を、万年筆よりはカジュアルに。そんなワガママに答えられるペンは存在するのだろうか。調査班はさらに調べを進める。すると新たなる出会いがあった。それが、「からっぽペン」というもの。

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 注意書きにはここのメーカーと違うインクを使った場合、インクが出ないこともあるかもとは書かれているがいまのところは支障ない。

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 使った感じはご覧の通りである。細いからかやや薄い色味だ。

 

§6.紙(ノート)

 さて、ここまでインクと各種インクを使ったペンの話をしてきた。ペンとは書く道具である。ということは紙が必要になる。ここにも何やらいろいろあるようだ。そのいろいろあるという部分を探るべく調査班は次なる一歩を踏み出した。

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 とりあえず万年筆ユーザーおすすめのノートを何冊か用意した。左からツバメノート、(インクをぶちまけた)ミドリノート、グラフィーロ、ノーブルノート。

 比較と使用した感想を、と考えていたが明確な差を述べることができるほどこの世界を知らないので今後の研究課題とする。さきほど使用したその辺のルーズリーフと比べるとインクの乾きが早い上に滲みもしにくい。

 

§7.さいごに

 以上がここ2ヶ月弱の間に私が目にした世界である。非常に深くてたくさんの沼が潜んでいた。

 万年筆はしばらく使用しないと、中でインクが乾燥してしまって詰まることがあるらしい。それを防ぐにはどんな手入れをすればいいのか。それは「書くこと」らしい。実に簡単な方法である。じゃあ何を書くのか。筆まめな人ならば日記もいいだろう。何かしらのメモだっていい。

 万年筆ごとの比較をするためと最推しのPRをするためにお気に入りの作品を引っ張ってきた。これは元は絵本の中の一編である。短いながらも大好きな作品だ。ちなみに使用したのはツバメノート。こうしてみると万年筆ごとの個性がよくわかる。

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 万年筆やその周辺の沼はどれもおもしろい世界だった。もし興味を持ったならば触れてみるのをすすめる。

 末尾にひとつだけみなさんにお伝えしたいことがある。それは「ティッシュとゴミ箱は手の届くところに置いておけ」。最悪詰む。以上がこの悲惨な経験をした私からのメッセージである。

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 ここまで読んでいただきありがとうございました。